事業報告書

令和2年度事業報告書

(令和2年4月1日から令和3年3月31日)

Ⅰ.事業の概要

 本年度も、ものづくりの根幹技術である金型技術及び金型を利用する成形技術等の研究開発活動に対する助成事業等を通じて、金型技術等の向上を図り、我が国工業社会及び産業経済の健全な発展に寄与するという当財団の目的に沿って、以下の事業をコロナ禍において出来る範疇等を模索しながら実施いたしました。

1. 研究助成事業
 金型技術及び成形技術等の研究テーマの公募を、4月1日から7月31日まで行い、国内の大学・大学院・高専並びにこれらに準ずる研究機関に所属する研究者から28件の応募があった。それを当財団の選考委員会にて公平かつ厳正な選考の結果、当財団の選考基準にふさわしい下表の助成テーマ7件を採択し、総額1,548万円の助成金を交付しました。
研究課題名 助成先 助成者
1 高温耐圧近赤外プローブセンサーの開発と射出成形プロセスのためのインライン組成計測システムの構築 京都大学 引間 悠太
2 木質系粉末の押出し加工による円管成形 電気通信大学 梶川 翔平
3 加工粉排出性向上によるワイヤ放電加工の高性能化 岡山大学 岡田  晃
4 加工中の温度勾配を用いた残留応力制御技術 東海大学 窪田 絋明
5 射出成形における離型抵抗計測金型の開発 日本工業大学 村田 康彦
6 デアロイングを用いた耐食性金型用鋼の開発 東北大学 山中 謙太
7 インモールド・エレクトロニクス用伸縮配線 東北大学 福島 誉史

 

2. 技術交流及び技術者・技能者の育成に対する助成事業
 技術交流及び技術交流支援の国際会議等開催に対する支援の公募を、前期が4月1日から7月31日、後期が9月1日から12月20日まで行い、国内の大学・大学院・高専並びにこれらに準ずる研究機関で研究開発を行っている研究者等から、後期の技術交流に1件、前期の国際会議等開催に1件の応募があり、また、金型に関する基礎研究や応用研究を行っている若い技術者・技能者の育成等に対する助成には、1件の応募がありました。当財団の選考委員会にて公平かつ厳正な選考の結果、当財団の選考基準にふさわしい下表の3件、84万の助成金を交付しました。
交流会議名及び技術者・技能者
育成講座名
期間 助成先 研究者名
1 (ICPE2020) 18th International Conference on Precision Engineering
(神戸市・オンデマンド開催)
2020年11月23日
~27日
(公社)精密工学会 高増  潔
2 SPIE Photonics West 2021
(米国サンフランシスコ市・オンライン開催)
2021年3月6日
~11日
九州大学 藤本  翼
3 令和2年度プラスチック金型初級技術者・技能者育成技術セミナー 2002年9月24日
~25日
(一社)日本金型工業会 技術委員会 平林 功造

 

3. 表彰事業
 型に関する技術に対して、特に優れ、かつ、貢献度の高い技術開発者並びに金型産業の発展に対する貢献度が顕著な者を顕彰する事によって、型技術並びに型産業のより一層の発展を図ることを目的に、「一般社団法人型技術協会」との共同事業として、例年、型技術協会主催の「型技術者会議」で顕彰してきましたが、コロナ禍のおり「型技術者会議」が中止となり下表の功績賞2件、技術賞1件、型技術論文賞3件、奨励賞6件は、受賞者へ個別に顕彰を行いました。
功績賞:型技術の進歩、向上、発展に関して特に功績の大きかった個人
受賞名 受賞理由 受賞者名
功績賞 高速ミーリング研究成果を金型の高精度・高能率加工につなげた。
型技術協会の設立以来、理事、編集委員長、企画委員長、副会長を歴任し、型技術協会の発展に貢献した。
安齋 正博
(芝浦工業大学)
原型の形状や模様の転写性において、抜きん出た精密さを発揮する電気電鋳金型を開発。日本金型工業会、理事および技術委員として金型業界の発展に尽力した。 野田 泰義
(KTX(株))

 

技術賞:特に優れた貢献度の高い型技術の開発者
受賞名 受賞題目名 受賞者名
技術賞 ポリ乳酸製薄肉容器・超臨界二酸化炭素射出成形金型技術の開発 小松 道男(小松技術士事務所)

 

型技術論文賞:「型技術」誌に掲載された特に優れた論文等の著者
受賞名 受賞論文名 受賞者名
型技術
論文賞
ABS装置用部品の軽量化・低コスト化に寄与する押込み絞りプレス加工技術の開発 馬場 保、松下 祐輔
(日伸工業(株))
冷間圧造技術を活かした異種金属接合工法「AKROSE」の開発 山本 浩二、手島 政和
(日東精工(株))
金属樹脂接合技術「ポリメタックR®」
-ヒート&クール成形法を用いた金属/非晶性樹脂の一体成形-
井上 悟郎、木村 和樹、三隅 正毅(三井化学(株))

 

奨励賞:型技術者会議及び型技術ワークショップにおける優秀講演者および連名者
受賞名 受賞論文名 受賞者名
奨励賞 CNF樹脂活用への成形技術と家電筐体への適用事例 石田 卓輝、西野 彰馬、切通 毅、峯 英生、曽山 隆彦、佐藤 照久、榎本 武弘
(パナソニックプロダクションエンジニアリング(株))
「走る歓び」の実現に向けたシリンダーヘッド寸法のモデルベース開発 梅原 美友、米澤 英樹、丸尾 幸治、末永 啓太(マツダ(株))
金属3Dプリンタにおける金型鋼の応力解放技術 新家 一朗、岡﨑 秀二、松本 格
((株)ソディック)
プラスチック金型における電極製作・放電加工の自動化システム開発 黒川 一成(キヤノン(株))
クランクシャフト鍛造ラインにおけるIoTを活用した粗材品質向上の取組み 中村 公香、藤川 真一郎、松苗 宏樹、渡邊 敦夫、石井 賢一郎(日産自動車(株))
異形工具を用いた加工時間短縮活動 針原 保、松本 康彦、鈴木 清孝
(ヤマハ発動機(株))

 

4. 調査・情報提供による普及啓発事業
 ア)助成研究成果報告会の開催
 例年、7月下旬に千葉県千葉市で開催してまいりました研究成果報告会は、新型コロナウイルス感染症の収束に見通しが立たないことから中止し、令和元年度に実施された下表の助成研究テーマの研究成果を論文集にまとめ、毎年参加いただいている方々、及び金型技術研究者、並びに金型関連企業の技術者等に頒布いたしました。
助成研究テーマの成果報告
助成研究テーマ名 助成先 研究者名
1 ガス透過型材による抗菌性銀ペースト成形法 富山県立大学 竹井  敏
2 振動付加鍛造中の成形界面のその場直接観察 大阪大学 松本  良
3 表面酸化による鋳造用金型の耐溶損性向上 近畿大学 淺野 和典
4 浸炭・窒化による鋼材の超精密切削特性改善 関西大学 古城 直道
5 熱可塑性CFRP成形のヒートアンドクール金型 金沢大学 米山  猛
6 バニシ加工による射出成形金型の自動仕上げ 福井大学 岡田 将人
7 柔構造金型を利用した微細管の高圧液圧成形 芝浦工業大学 吉原正一郎
8 レーザー衝撃波による金型用硬質膜の密着力評価と耐久性向上 中央大学 米津 明生
9 マイクロスリット内面への高硬度DLC成膜 東京大学 崔  埈豪
10 次世代ナノインプリント用モールドの開発 東北大学 木野 久志
 イ)金型産業史の編纂事業の実施
 冷間鍛造型の産業史としての編纂は、聞取り調査を行った2社が世界でトップの鍛造金型メーカになり得た理由の提言等について、再三の訪問による産業史としてのまとめの摺合せが、コロナ禍の影響によりできなかった。
 ウ)技術・業界動向調査事業の実施
 本年度は、東北大学の石田氏および立命館大学の小山氏に委託した「日本の金型の製造技術・技術伝承及びコンピュータ援用技術の進展」が3ヶ年計画の最終年度であり、また、塑性加工学会金型分科会に委託した「プレス加工におけるコネクティド金型に関する調査研究」が初年度の調査であるが、共に調査期間が新型コロナウイルス感染症の拡がりと期を同一にしたことで調査を進めることができなかった。

Ⅱ.処務の概要

1. 役員に関する事項(あいうえお順)

令和3年3月31日現在(略歴は就任時を記載)
役職名 氏 名 就任年月日 担当職務 略  歴
評議員 上田 勝弘 令和2年6月11日 非常勤 大垣精工(株) 代表取締役
評議員 黒田 浩史 令和2年6月11日 非常勤 黒田精工(株) 代表取締役
評議員 桜田  弘 令和2年6月11日 非常勤 双葉電子工業(株) 相談役
評議員 福井 雅彦 令和2年6月11日 非常勤 東京工科大学 名誉教授
評議員 牧野 俊清 令和2年6月11日 非常勤 (株)長津製作所 代表取締役
評議員 横井 秀俊 令和2年6月11日 非常勤 YOKOI Labo代表/東京大学名誉教授

 

理 事 安齋 正博 令和2年6月11日 非常勤 芝浦工業大学 教授
理 事 石井 良雄 令和2年6月11日 専務理事
常勤
当財団事務局長(兼務)
理 事 石出 光正 令和2年6月11日 非常勤 双葉電子工業(株) 理事
当財団代表理事
理 事 犬飼  治 令和2年6月11日 非常勤 当財団前代表理事
理 事 久保木 孝 令和2年6月11日 非常勤 電気通信大学 教授
理 事 小山 秀夫 令和2年6月11日 非常勤 立命館大学OIC総合研究機構
グローバルMOT 客員研究員
理 事 髙橋 幹也 令和2年6月11日 非常勤 双葉電子工業(株) 精機事業センター次長
理 事 友常 洋一 令和2年6月11日 非常勤 前キヤノンモールド(株)
代表取締役社長

 

監 事 進藤 直義 令和2年6月11日 非常勤 公認会計士・税理士
監 事 竹下 正己 令和2年6月11日 非常勤 原合同法律事務所 社員弁護士

 

2. 会議に関する事項

(理事会)
開催月日 議 事 事 項 結果
第34回理事会
(書面による見なし会議)
令和2年5月19日
第34回理事会日時・場所の決定(書面による見なし会議)承認の件 承認
第1号議案「令和元年度事業報告及び財務諸表」承認の件 承認
第2号議案「定時評議員会の日時及び場所並びに目的である事項等」承認の件 承認
第3号議案「令和2年度表彰事業の選考結果」承認の件 承認
第4号議案 任期満了に伴う役員の改選に対する推薦案および選考委員の改選案」承認の件 承認
第5号議案「定款改訂(理事の定数変更)案」承認の件 承認
第6号議案「今年度の助成研究成果発表会開催の可否について」承認の件 承認
報告事項「令和元年度後期理事長及び専務理事の職務執行報告」  
第35回理事会
(書面による見なし会議)
令和2年6月11日
第35回臨時理事会日時・場所の決定(書面による見なし会議)承認の件 承認
第1号議案「令和2年度・3年度の代表理事ならびに業務執行理事の選任」承認の件 承認
第36回理事会
(書面による見なし会議)
令和2年10月27日
第36回理事会日時・場所の決定(書面による見なし会議)承認の件 承認
第1号議案「令和2年度研究開発助成テーマ選考結果」承認の件 承認
第2号議案「国際会議開催助成選考結果」承認の件 承認
報告事項「令和2年度前期理事長及び専務理事の職務執行報告」  
第37回理事会
(書面による見なし会議)
令和3年1月20日
第37回臨時理事会日時・場所の決定(書面による見なし会議)承認の件 承認
第1号議案「令和2年度後期海外技術交流助成者選考結果」承認の件 承認
第38回理事会
(通常理事会・オンライン開催)
令和3年2月26日
第1号議案「令和3年度事業計画(案)」承認の件 承認
第2号議案「令和3年度収支予算(案)」承認の件 承認
第3号議案「令和3年度海外との技術交流助成応募要領(案)」及び「令和3年度研究開発助成応募要領(案)」承認の件 承認
第39回理事会
(通常理事会・オンライン開催)
令和3年5月20日
第1号議案「令和2年度事業報告及び財務諸表」承認の件 承認
第2号議案「定時評議員会の日時及び場所並びに目的である事項等」承認の件 承認
第3号議案「令和3年度表彰事業の選考結果」承認の件 承認
第4号議案「公益目的基本財産を取崩し特定資産への組入れに関する提案」承認の件 承認
第5号議案「今年度の助成研究成果発表会開催の可否について」承認の件 承認
報告事項「令和2年10月からの理事長及び専務理事の職務執行報告」  

 

(評議員会)
開催月日 議 事 事 項 結果
第11回
定時評議員会
(書面による見なし会議)
令和2年6月11日
第11回評議員会の日時・場所の決定(書面による見なし会議開催)承認の件 承認
第1号議案「令和元年度事業報告及び財務諸表」承認の件 承認
第2号議案「任期満了に伴う役員の改選に対する推薦案」承認の件 承認
第3号議案「定款改訂(理事の定数変更)案」承認の件 承認
第4号議案「常勤役員への支払い報酬額」承認の件 承認
報告事項
①令和2年度事業計画及び収支予算書について
②第30回理事会から第34回理事会の決議内容について
③理事長及び専務理事の職務の執行に関する報告
 

 

(選考委員会)
開催月日 議 事 事 項 結果
令和2年10月8日 第1号議案「選考委員会規定の確認及び議長の選任」 議決
第2号議案「令和2年度研究開発助成テーマの選考審議及び国際会議開催助成の選考審議並びに理事会への推薦案決定」 議決
令和3年1月20日
(書面による見なし会議)
第1号議案「令和2年度後期海外技術交流助成等のテーマ選考審議及び国際会議開催助成の選考審議並びに理事会への推薦案決定」 議決

 

3. 許可、認可及び承認に関する事項
該当事項なし
4. 内閣府指示に関する事項
該当事項なし
5. 契約に関する事項
該当事項なし
6. 寄附金に関する事項
該当事項なし
7. その他重要事項
該当事項なし

事業報告の附属明細書

令和2年度事業報告には、「事業報告の内容を補足する重要な事項」が存在しないので、定款第11条(2)に規定する事業報告の附属明細書は作成しない。